はっきりさせたいのかと聞かれたら
答えは「違う」だった。
白か黒か。
正しいか、間違っているか。
そういう分かりやすい話にしたいわけじゃない。
むしろ、
そんな結論が出てしまうことを
どこかで避けている自分がいた。
世の中には、
白黒つけたほうがいい場面もある。
曖昧なままでは前に進めないこともある。
それは分かっている。
でも、
この件に関してはそう割り切ってしまうことに
強い抵抗があった。
もし、
はっきりすれば。
楽になるのかもしれない。
考え続けなくてよくなる。
迷わなくてよくなる。
この宙ぶらりんな感覚から
解放されるかもしれない。
それは、
確かに魅力的だった。
でも同時に、
はっきりさせた瞬間
何かを失う気もしていた。
今ある日常。
今ある距離感。
今ある静かな均衡。
それが、
一気に崩れてしまう気がしていた。
白か黒かを決めるということは
何かを選ぶということだ。
選ぶということは、
選ばなかったほうを
手放すということでもある。
今はまだ、
曖昧な場所にいられる。
完全に信じる必要もないし
完全に疑う必要もない。
決めなくていい。
選ばなくていい。
この中間地点にいることが
唯一の逃げ場のようにも感じられた。
白黒つけないという選択は、
自分を守っているようでもあり
同時に自分を縛っているようでもあった。
守られているから
大きな衝撃を受けずに済んでいる。
縛られているから
どこにも進めない。
その両方を
はっきり自覚していた。
「このままでいいのか」
そう問いかける自分と
「今はこれしかできない」
と答える自分が頭の中で並んでいた。
答えを出したくない、
というより答えが出たあとの自分を
想像できなかった。
どんな顔をしているのか。
どんな日常を送っているのか。
今と何が違っているのか。
それが、
どうしても見えなかった。
見えない未来に向かって
一気に踏み出すほどの覚悟は
まだ持てていなかった。
だから、
考え続けている。
結論を出さないまま、
思考を並べて気持ちを確かめ続けている。
それが正しいのか
間違っているのか。
その判断すら今はつけられない。
ただ、
白黒つけたいわけじゃない
という気持ちだけははっきりしていた。
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