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何も言わない選択が正しいのか迷った

その日も、
特に変わったことはなかった。

いつもと同じ時間に夕飯を食べて
いつもと同じ流れで子どもを寝かせて
静かになった家の中で二人そろってリビングに戻る。

特別な出来事もない。
空気が重いわけでもない。
むしろ穏やかと言っていい時間だった。

「明日、ゴミ出しお願いしていい?」

嫁が何気なくそう言う。

「うん」

それだけのやり取り。

短いけれど
必要な会話はちゃんと成立している。

ぎこちなさもない。
不自然な間もない。

誰が見ても問題のない日常だと思う。

だからこそ、
余計に迷いが生まれた。
この状態で何かを言い出す必要があるのか。

わざわざ
波を立てるようなことを
する意味があるのか。

言わなければ
今まで通りの日常は続く。

同じ会話。
同じ時間の流れ。
同じ距離感。

少なくとも表面上は何も変わらない。

それは一つの安心でもあった。

「最近どう?」

そんな一言が頭の中で何度も浮かぶ。
本当にただそれだけの言葉。

深い意味を持たせなくてもいい。
問い詰めるわけでもない。

でも、
その一言を口にした瞬間から
今とは違う時間が始まってしまう気がした。

どう返ってくるのか
想像できなかった。

軽く流されるのか。
真面目に返されるのか。
それとも何かを察されてしまうのか。

どの反応も今の自分には重かった。

何も言わない選択は
とても穏やかだ。

波風は立たない。
空気も変わらない。
余計な説明もいらない。

「いつも通り」でいられる。

でも同時に何も進まない。

違和感はそこにあるまま。

自分の中だけで
静かに積み重なっていく。

正しいのはどちらなのか。
言わないことが相手のためなのか。

余計な心配をさせないため。
無用な不安を与えないため。

そう考えれば
優しさのようにも思える。

それとも
自分の逃げなのか。

向き合う勇気がないだけ。
何かが変わるのが怖いだけ。

そう考えると
胸の奥が少し痛んだ。

どちらの可能性も、
否定できなかった。

結局、
その夜も何も言わなかった。

テレビを少し見て
先に風呂に入って
いつも通りに一日が終わる。

何事もなかったように。

布団に入ってからもしばらく考えていた。
言わなかったことが正解だったのか。

それともまた一つ
先送りにしただけなのか。

答えは出なかった。

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この記事を書いた人

「理由は分からないけれど、何かがおかしい気がする」
そんな感覚を抱いたことのある方に、少しでも共感していただけたらと思い、このブログを続けています。日々の出来事や感じたことを、自分なりの言葉で淡々と綴っています。

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