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気づかなかったふりが限界だった

もう、
気づいていないふりをするのが
一番つらくなっていた。

何かが起きたわけじゃない。
決定的な瞬間があったわけでもない。

ただ、
これまで続けてきた「やり過ごし方」が
限界に近づいていることだけははっきり分かった。

見ないようにする。
考えないようにする。
深掘りしないようにする。

言葉にすると簡単だけど、
そのどれもがかなりの力を必要とする。

意識を逸らす。
別の理由を考える。
自分に言い聞かせる。

それを一日だけじゃなく
毎日繰り返している。

「何も起きていない」
という状態を保つために
ずっと力を入れ続けている感覚だった。

ある日の夕方、
特別な空気でもなく
本当に何気ないタイミングで聞かれた。

「大丈夫そう?」

心配そうでも疑うようでもない。
ただの確認。

「うん」

反射的にそう答えた。

その一言を返すだけで
少し疲れる自分がいた。

声のトーンを整えて
表情を作って
余計な間を空けないようにする。

以前なら、
意識すらしなかったこと。

今は、
それだけで消耗する。

気づかなかったふりは
何もしないことじゃない。

むしろ逆だ。

常に、
自分を抑え続けること。

浮かびそうになる言葉を飲み込み
問いを頭の奥に押し戻し
感覚に蓋をする。

その作業をずっと続けている。

ここまで来ると、
考えている時間より抑えている時間の方が長い。

何も起きていない、
という状態を維持するために
毎日無理をしている。

無理をしている自覚は、
最初はなかった。

でも、疲れが残る。
集中できない。
小さな一言に余計な力を使う。

それらが重なって
ようやく分かった。

これは、
もう続けられない。

限界だった。

何かを決めたわけじゃない。
覚悟を固めたわけでもない。

「どうする」と
答えが出たわけでもない。

ただ、
これ以上ごまかす余裕がなくなった。

気づいていないふりを続けるには、
もう、自分の気持ちが正直すぎた。

見ないふりをするには
見えているものが多すぎた。

考えないようにするには
考え続けてきた時間が長すぎた。

何も起きていない
という顔をしながら内側だけが削れていく。

その状態に、
もう耐えられなかった。

ここから先、
どうするのかは分からない。

でも一つだけ、
はっきりしている。

気づいていないふりを
これ以上続けることだけはもうできない。

その地点に静かにしかし確実に
立ってしまっていた。

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この記事を書いた人

「理由は分からないけれど、何かがおかしい気がする」
そんな感覚を抱いたことのある方に、少しでも共感していただけたらと思い、このブログを続けています。日々の出来事や感じたことを、自分なりの言葉で淡々と綴っています。

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