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考えないようにするのが一番難しかった

「考えないようにしよう」

そう決めた日の方がかえって考えてしまう。

むしろそう決めた瞬間から
頭のどこかで警戒が始まる。

「今、考えていないか」
「また同じことを思い出していないか」

その確認自体が
すでに思考を呼び戻している。

仕事に集中しているはずの時間でも
ふとした隙間に入り込んでくる。

メールを開く前の一瞬。
画面が切り替わるまでのわずかな待ち時間。
作業が一区切りついた直後。

意識が緩んだ瞬間を狙うように
思い出したくない考えが浮かぶ。

家に帰る途中でも同じだった。
歩き慣れた道。
信号待ちの時間。
電車の揺れ。

特別な刺激があるわけでもないのに、
頭の片隅にずっと何かが残っている。

完全に前面に出てくるわけではない。
でも確実にそこにある。

無理に別のことを考えようとすると
余計に意識してしまう。

楽しいことを思い浮かべようとしても
どこか上滑りする。

意識を逸らしているはずなのに
「逸らしている」という感覚が消えない。

静かな時間ほど思考は止まらなかった。

音が少なくなるほど
頭の中の声がはっきりしてくる。

夜、布団に入ると
一日の出来事を振り返ってしまう。

今日も特別な出来事はなかった。

大きな失敗もない。
感情が大きく揺れた瞬間もない。

それでも細かい場面が次々と浮かんでくる。

何気ない会話。
曖昧な表情。
ほんの数秒の沈黙。

「あのときの返事」
「あの間」
「あの空気」

どれも
その場では流してしまったものばかりだった。

後から振り返っても
決定的な意味があるとは言えない。

一つひとつを取り出せば気にするほどのことではない。
でもそれらが重なっていくと無視できなくなる。

理由は分からない。
説明しろと言われても
うまく言葉にできない。

ただ「何かがおかしい」という感覚だけが
静かに積み上がっていく。

考えること自体が悪いわけじゃない。
それは、頭では分かっている。

考えるからこそ、
気づけることもある。
整理できることもある。

それなのに、
考えすぎている自分を、
どこかで責めている。

「また同じところをぐるぐるしている」
「何も決まっていないのに」
「意味のない思考だ」

そんな言葉が
自分に向けて投げられる。

「まだ何も起きていない」
「結論を出す段階じゃない」
「今は様子を見るべきだ」

その言葉を繰り返しながら
頭の中で堂々巡りをしていた。

考えないようにしようとする。
でも考えてしまう自分を否定する。

否定すると余計に意識してしまう。

その繰り返しだった。

考えないようにすることが一番難しい。

何かを始めるよりも、
何かを変えるよりも、
何もしないようにする方がずっと難しかった。

その事実に気づいたとき、
違和感はもう一時的なものではなくなっていた。

一晩眠れば消えるものではない。
忙しさで紛れるものでもない。

無視し続けるには、
あまりにも意識に近い場所にある。

考えないようにしようとすればするほど
そこに向き合う必要があるのではないか
そんな気さえしてくる。

まだ答えはない。
どうすればいいかも分からない。

ただ「考えない」という選択肢が
すでに成立しなくなっている。

そのことだけははっきりと分かっていた。

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この記事を書いた人

「理由は分からないけれど、何かがおかしい気がする」
そんな感覚を抱いたことのある方に、少しでも共感していただけたらと思い、このブログを続けています。日々の出来事や感じたことを、自分なりの言葉で淡々と綴っています。

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