ここ最近、同じことを何度も考えていた。
嫁のこと。
そして、自分のこれからのこと。
以前の自分は、考え始めるとすぐに止めていた。
浮気という言葉が頭に浮かぶと、そこで思考を閉じていた。
まだ早い。
まだ分からない。
そうやって、自分に言い聞かせてきた。
でも今は、少し違っていた。
完全に覚悟が決まったわけではない。
それでも、自分の中で「確かめる」という方向が、少しずつ形になってきていた。
夜、リビングで一人になったとき、ふと気づいたことがあった。
胸の奥にずっとあった重さが、ほんの少しだけ変わっている。
消えたわけではない。
不安も迷いも、まだある。
それでも、以前のような息苦しさは少しだけ薄れていた。
理由は分かっていた。
もし事実が分かれば。
そう思えるようになったからだった。
嫁が浮気をしているのかどうか。
それが分かれば、今のこの曖昧な状態からは抜け出せる。
疑い続ける時間が終わる。
それだけでも、自分の心は少し軽くなる気がしていた。
今の状態は、正直に言えば苦しかった。
浮気をしているかもしれない。
でも、していないかもしれない。
その間で、ずっと揺れている。
嫁の行動を見るたびに、頭の中で考えてしまう。
スマホを触る時間。
帰宅のタイミング。
会話のちょっとした温度。
どれも決定的ではない。
でも、その一つ一つに意味を探してしまう。
そして、その答えはどこにもない。
証拠もない。
確信もない。
だから、終わりがない。
その終わりのない状態が、自分の心を少しずつ削っていた。
もし浮気が事実なら、現実を受け止めるしかない。
そのときは、そのときだ。
離婚という選択を考えることになるかもしれない。
それは簡単なことではない。
子どものこともある。
生活のこともある。
感情だけで決められる話ではない。
それでも、少なくとも「分からないまま悩む状態」からは抜け出せる。
その違いは、自分にとって大きい気がしていた。
リビングのソファに座りながら、そんなことを考えていた。
嫁はキッチンにいた。
水の流れる音が聞こえる。
「今日、仕事どうだった?」
嫁が聞いてきた。
「普通かな」
「忙しかった?」
「まあ、いつも通り」
短いやり取りだった。
その会話のあと、嫁はまたキッチンに戻った。
その背中を見ながら、自分は思った。
この人が本当に浮気をしているのかどうか。
それを、自分はまだ知らない。
知らないからこそ、頭の中でいろいろな想像をしてしまう。
でも、もし事実が分かったら。
どちらの結果であっても、自分は前に進める気がした。
疑いが間違いなら、それでいい。
自分の考えすぎだったと分かれば、安心できる。
逆に、浮気が事実なら。
そのときは、現実として向き合うしかない。
逃げ続けることはできない。
どちらにしても、今より前に進める。
そんな気がしていた。
天井を見上げながら、静かに息を吐いた。
怖さがなくなったわけではない。
でも、少しだけ覚悟に近い気持ちが生まれていた。
事実を知ること。
それは、自分にとって避け続けてきたことだった。
でも同時に、そこからしか前には進めない気もしていた。
そして今、自分の心は、ほんの少しだけ軽くなっていた。
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