ここ数日、自分の中で考え続けていたことがあった。
友人に話し、無料で相談できる場所があることも知った。
まだ実際に相談はしていない。
それでも、自分の中では確実に何かが進んでいた。
ただ漠然と考えるのではなく、はっきりと言葉にしてみようと思った。
嫁に対して、自分は何を感じているのか。
何が引っかかっているのか。
どうしたいのか。
ノートを開くわけでもなく、スマホのメモを使うわけでもなく、ただ頭の中で整理しようとした。
でも、それでは足りない気がした。
一度、実際に文字にしてみようと思った。
スマホのメモを開き、ゆっくりと打ち始めた。
「嫁の様子が変わったと感じている」
最初に書いたのは、それだった。
本当に変わったのかは分からない。
でも、自分はそう感じている。
その次に続けた。
「会話が減った気がする」
「目を合わせる時間が短くなった気がする」
「スマホを見る時間が増えたように思う」
どれも、決定的なものではない。
証拠になるようなことではない。
それでも、自分の中に積み重なっている事実だった。
打ちながら、胸の奥が少し重くなった。
浮気という言葉は、まだ書かなかった。
書いてしまうと、急に現実味を帯びる気がした。
それでも、考えないようにしても、頭のどこかには常にあった。
少し間を置いてから、続けた。
「自分は不安になっている」
これを書いたとき、自分でも少し驚いた。
怒っているわけでもない。
責めたいわけでもない。
ただ、不安なのだと気づいた。
浮気をされているかもしれないという不安。
何かを知らされていないのではないかという不安。
自分だけが取り残されているのではないかという不安。
それを認めるのは、簡単ではなかった。
でも、言葉にしてみると、少しだけ整理できた気がした。
さらに書いた。
「はっきりさせたい気持ちがある」
「でも、知るのが怖い」
ここで、指が止まった。
知るのが怖い、という部分が一番正直だった。
もし何もなければ、それでいい。
でも、もし本当に浮気をしていたら。
その先には、今まで通りの生活はないかもしれない。
離婚という選択肢を、現実として考えなければならなくなるかもしれない。
まだそこまで進んでいない。
進みたくないと思っている自分もいる。
それでも、何もせずにいることが、正しいとも思えなくなっていた。
その夜、思い切って嫁に少しだけ話してみようと思った。
いきなり核心に触れるつもりはなかった。
ただ、自分の気持ちを少しだけ伝えてみようと思った。
リビングでテレビを見ている嫁に声をかけた。
「少し話してもいい?」
嫁はリモコンを置いた。
「どうしたの?」
その表情は、特別なものではなかった。
「最近さ、少し距離を感じてる」
言葉にする瞬間、喉が少し乾いた。
嫁は少しだけ眉を動かした。
「距離?」
「うまく言えないんだけど、前より会話が減った気がして」
自分でも、遠回しな言い方だと思った。
それでも、いきなり浮気という言葉を出す勇気はなかった。
嫁は少し黙ったあと、言った。
「そんなことないと思うけど」
その返事は、予想通りだった。
否定されることも、分かっていた。
「そうかもしれない。でも、俺は少しそう感じてる」
そこまで言えただけでも、自分にとっては大きかった。
嫁は少し考えるような表情をしていた。
「忙しいだけじゃない?」
「それもあるかもしれない」
会話は、それ以上深くは続かなかった。
はっきりとした答えは出なかった。
それでも、自分の中では確実に一歩進んでいた。
今までは、何も言わずにいた。
考えているだけだった。
でも、今日は少しだけ言葉にした。
自分の気持ちを、外に出した。
それは、怖さもあったが、同時に必要なことのようにも感じていた。
まだ結論は出ていない。
浮気をしているかどうかも分からない。
離婚を考える段階でもない。
それでも、自分は少しずつ、曖昧な状態から抜け出そうとしていた。
そして、自分の考えを言葉にすることが、その最初の行動だった。
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