一人で抱え続けることに、
少しずつ限界を感じ始めてから、
これまでとは違う考えが頭に浮かぶようになっていた。
誰かに話す。
それは、
ずっと避けてきた選択だった。
自分の中で考え、
自分の中で整理し、
自分の中だけで納得しようとしてきた。
それが一番穏やかな方法だと思っていたし、
何も壊さずに済む道だとも思っていた。
実際、
ここまでやってこられたのは、
そのやり方だったからだと思う。
記録を続けることで、
少しずつ頭の中は整ってきた。
感情だけに振り回されることも、
以前よりは減ってきた。
それでも、
どこかで行き止まりに近い感覚があった。
整理はできる。
考えることもできる。
でも、
そこから先に進めない。
同じ場所を、
ずっと回り続けているような感覚が残る。
答えを出そうとしているわけではない。
ただ、
考え続けること自体が、
少しずつ重くなってきていた。
そんな時、
ふと頭に浮かんだ。
「誰かに話したら、どうなるんだろう」
それは、
はっきりした願望ではなかった。
むしろ、
少し怖さの方が強い。
誰かに話すということは、
自分の中にあるものを外に出すということだ。
曖昧なまま抱えていたものに、
形を与えることになる。
それを、
今までずっと避けてきた。
言葉にした瞬間、
現実が急に重くなる気がしていた。
それでも、
考えが完全に消えることはなかった。
助けを求める、
という言葉が、
少しずつ現実味を帯びてくる。
大げさなことではない。
誰かにすべてを話すとか、
すぐに何かを決めるとか、
そういうことではない。
ただ、
一人で持ち続ける以外の方法が、
あるかもしれない。
そんなふうに思い始めていた。
これまでの自分なら、
その考えをすぐに打ち消していた。
「まだ早い」
「話す段階じゃない」
「自分で考えるべきだ」
そう言って、
元の場所に戻っていた。
でも今回は、
完全には消えなかった。
頭の片隅に、
その考えが残る。
助けを求める、
というほどの強さではない。
でも、
外に目を向ける可能性を、
初めて意識した瞬間だった。
これまでは、
ずっと内側だけを見ていた。
記録をして、
考えて、
整理して。
それを繰り返してきた。
そのやり方が間違っていたとは、
思っていない。
むしろ、
必要な時間だった。
ただ、
ずっと同じ場所に立ち続けている感覚が、
少しずつ変わり始めていた。
もし、
誰かに話したら。
もし、
少しだけ外の視点が入ったら。
何かが変わるのかもしれない。
良くなるのか、
悪くなるのかは分からない。
でも、
何も変わらないまま考え続けることだけが、
唯一の道ではない気がしていた。
まだ、
具体的に誰かの顔が浮かんでいるわけではない。
どこに相談するかも、
全く考えていない。
それでも、
これまで閉じていた扉が、
ほんの少しだけ開いたような感覚があった。
その変化は、
とても小さなものだった。
けれど、
自分の中では、
はっきりと分かる違いだった。
外に助けを求める、
という選択肢が、
初めて現実のものとして
見え始めていた。
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