記録を続けることには、
確かに意味があった。
頭の中にあったものが、
少しずつ整理されていく。
曖昧だった出来事が、
時間の流れの中に並んでいく。
それだけで、
少し呼吸がしやすくなる瞬間もあった。
でも、
整理されていくほどに、
別の感覚が強くなっていった。
自分の中に、
積み重なっていくものがある。
消えていくのではなく、
静かに増えていく。
その重さに、
ある日ふと気づいた。
これを全部、
一人で持ち続けるのは、
思っていたよりも大変なのかもしれない。
誰かに責められているわけではない。
何かが急に起きたわけでもない。
生活は、
これまで通り続いている。
会話もある。
食事もする。
同じ部屋で過ごす時間もある。
表面だけを見れば、
特に変わったところはない。
それでも、
自分の内側には、
ずっと同じものが残り続けている。
消えない違和感。
整理しきれない感情。
積み上がっていく記録。
それらを、
ずっと一人で見つめ続けている。
最初は、
それが当たり前だと思っていた。
自分のことだから、
自分で考える。
自分の問題だから、
自分で抱える。
そうするのが、
自然だと思っていた。
でも、
時間が経つほどに、
少しずつ感覚が変わってきた。
考えること自体は、
嫌ではない。
整理することも、
苦ではない。
むしろ、
続けることで落ち着く部分もある。
それでも、
全部を一人で抱え続けることに、
どこか限界が見え始めていた。
記録は増えていく。
考える時間も増えていく。
その分、
頭の中にあるものの量も、
少しずつ重くなっていく。
溢れそう、
というほどではない。
ただ、
常にそこにある。
気を抜いた時に、
すぐ手に取れる場所に置かれている。
それをずっと持ち歩いているような、
そんな感覚だった。
以前は、
考えない時間もあった。
仕事に集中している時。
何かに没頭している時。
そういう時間は、
自然と気持ちが離れていた。
でも今は、
どこかに必ず残っている。
完全に手放せる時間が、
少しずつ減ってきていた。
一人で抱えるということは、
誰にも触れさせないということだ。
言葉にも出さない。
表情にも出さない。
外からは、
何も変わっていないように見える。
それでも、
内側では、
ずっと同じことを繰り返している。
その状態が、
少しだけ苦しく感じられるようになっていた。
助けてほしい、
という感覚とは少し違う。
ただ、
一人で考え続ける時間が、
長くなりすぎている。
そんな実感があった。
これまで、
誰にも話すことは考えていなかった。
話してしまえば、
現実が大きく動く気がしていた。
言葉にした瞬間、
戻れなくなる気がしていた。
だから、
ずっと自分の中に置いてきた。
それでも、
このままずっと一人で持ち続けることが、
本当にできるのか。
そんな問いが、
少しずつ頭に浮かぶようになっていた。
まだ答えは出ていない。
誰かに話すかどうかも、
決めていない。
ただ、
これまでとは違って、
「一人で抱える」という選択に、
少しだけ迷いが生まれていた。
その迷い自体が、
これまでとの大きな違いだった。
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