記録を続けることで
多くの感情は、確かに落ち着いてきた。
不安も、
疑念も、
最初に感じていた頃ほど
鋭く胸を刺すものではなくなっていた。
頭の中が整理され
状況を把握できるようになったことで
感情の波は以前よりも小さくなっていた。
それは、
自分でもはっきり分かる変化だった。
それでも、
完全には消えない感情があった。
どれだけ整理しても、
どれだけ事実を積み上げても、
最後まで残り続けているものがある。
それは悲しさや怒りのように、
名前をつけやすい感情ではなかった。
泣きたくなるほどでもなく、
誰かを責めたくなるほどでもない。
でも、確実にそこにある。
静かで重たいものだった。
「もし、本当だったらどうしよう」
「もし、全部自分の思い過ごしだったら、
自分は何をしているんだろう」
その二つの考えの間を
行ったり来たりする感覚。
どちらかに振り切れるわけでもなく
どちらも完全には否定できないまま
心の底に沈んでいた。
浮かび上がってくることは少ない。
でも、完全に消えることもない。
嫁と過ごす日常は、
表面上は変わらない。
会話もある。
生活は続いている。
一見すると何も問題がないようにも見える。
だからこそ、
この感情には行き場がなかった。
怒りとして表に出ることもできない。
悲しみとして共有することもできない。
「まだ何も起きていない」という状況が、
この感情を、
どこにも置けなくしていた。
整理すれば感情は薄まっていく。
そう思っていた。
事実を積み上げ、冷静に考えれば、
いずれは消えていくものだとどこかで期待していた。
でも実際は消えなかった。
薄まることはあっても形を変えて、
残り続けていた。
不安が覚悟に近いものに
変わることもあれば、
疑念が諦めのような感覚に
変わることもあった。
でも、
完全にゼロになることはなかった。
そのことを
ようやく認めるしかないと思うようになった。
消えない感情があるという事実を。
それは
整理が足りないからでも
自分が弱いからでもない。
この状況に置かれた以上
自然に生まれてしまうものなのだと
少しずつ考えられるようになった。
答えが出ていない状態で、
大切な関係を疑っている。
その重さが何も感じずにいられるはずがない。
整理は、
感情を消すためのものではなかった。
感情と一緒になんとか立っているためのものだった。
消えない感情があることを、
否定しない。
押し込めない。
無理に片づけない。
ただ、
そこにあると認める。
それが、
この段階でできる唯一の向き合い方だったのだと思う。
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