MENU

休日なのに一緒に出かけなくなった

休日になると
三人で出かけるのが当たり前だった。

遠出をするわけでもない。
有名な場所に行く必要もなかった。

近くの公園や少し大きなショッピングモール。
子どもが走り回れて、笑ってくれればそれで十分だった。

休日の朝は「今日はどこ行く?」
そんな一言から始まることが多かった。

特に計画がなくても
外に出ること自体が家族の時間だった。

その日もいつもと同じ休日のはずだった。
朝食を終え、片付けをしていると
子どもが無邪気に言った。

「ねえ、どこか行こう」

その言葉に俺は自然と頷いた。
そしていつものように嫁の方を見る。

「どうする?」

何気ない問いかけだった。
断られることなんてほとんど考えていなかった。

嫁は少し間を置いてから
考えるような素振りを見せて答えた。

「今日は家でいいかな」

声のトーンは穏やかだった。
体調が悪そうな様子もない。
忙しそうでもない。

理由は特に語られなかった。

「そっか」

それ以上、何も言えなかった。
理由を聞くこともできたはずなのに
なぜかそのまま話を終わらせてしまった。

結局、俺と子どもだけで外に出た。
靴を履かせながら、どこかいつもより
静かな気持ちで玄関を出た。

公園では、子どもは楽しそうに走り回った。
滑り台を何度も滑り、ブランコに揺られ、
途中でアイスを買って一緒に食べた。

それなりに楽しい時間だった。
笑顔もあったし会話もあった。
それなのにどこか気持ちが晴れなかった。

家族で出かけているはずなのに、
「三人」という感覚がどこか欠けている。

帰り道「ママ、来なかったね」
子どもが何気なく言った。

「今日はお留守番だよ」

そう答えながら
自分の声が少しだけぎこちなく感じた。

家に戻ると嫁はリビングでスマホを見ていた。
ソファに座り画面を見つめる横顔。

「おかえり」

その声は穏やかで特に問題があるようには見えない。
外出を断ったことを気にしている様子もなかった。

俺は「楽しかった?」
そう聞かれるのをどこかで待っていた。

でも、そんな言葉は出てこなかった。

子どもが話しかけても、
軽く相槌を打つだけで、
視線はすぐにスマホに戻った。

以前なら、
「どこ行ったの?」
「何して遊んだの?」
そんなやり取りが自然にあったはずだった。

一緒に出かけない休日が、
ただの選択だったのか、
それとも何かの変化だったのか。

そのとき一緒に過ごす時間が、
少しずつ減っていることに、
はっきりと気づいてしまった。

会話が減り、帰りが遅くなり、
スマホを見る時間が増え、
そして休日まで別々に過ごすようになった。

どれも一つひとつは小さなことだ。
大きな問題だと誰かに言えるほどじゃない。

それでもその小さな変化が積み重なって
気づけば同じ家にいながら別々の時間を
生きているような感覚になっていた。

俺はその日、
「一緒にいない休日」を
初めてはっきりと意識した。

それがただの気まぐれではない気がして。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「理由は分からないけれど、何かがおかしい気がする」
そんな感覚を抱いたことのある方に、少しでも共感していただけたらと思い、このブログを続けています。日々の出来事や感じたことを、自分なりの言葉で淡々と綴っています。

コメント

コメントする

目次