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スマホを見る時間が増えた気がした

最近、嫁がスマホを見る時間が増えた気がした。
そう感じたのもはっきりとした瞬間があったわけじゃない。

ある日突然、というより、
気づいたら「前とは違う」
と思うようになっていた。

以前は、スマホをテーブルの上に
置きっぱなしにしていることも多かった。

充電したまま、リビングに忘れていることもあった。

どこに置いたか分からなくなって
探している姿を見ることも珍しくなかった。

子どもと遊んでいるときは
ほとんど画面を見なかったと思う。

絵本を読んだり、積み木を一緒に積んだり、
子どもの話に相槌を打ちながら自然に笑っていた。

スマホは生活の一部ではあったけれど、
今ほど存在感のあるものじゃなかった。

それがいつの間にか変わっていた。

キッチンに立つときも、
ソファに座るときも、
洗濯物をたたむときでさえ、
必ず手の届くところにスマホがあった。

テーブルの端。
エプロンのポケット。
クッションの横。

まるで、置き場所が決まっているかのように、
常に視界と手の範囲に収まっていた。

通知音が鳴るとすぐに画面を確認する。
料理の途中でもテレビを見ている最中でも、
一瞬だけ手を止めてちらりと目を落とす。

その動作がやけに素早かった。

気になったのは、使う頻度そのものよりも、
スマホの扱い方だった。

俺が近くにいると、画面を伏せる。
テーブルに置くときも、必ず裏返し。
俺が後ろを通ると、さっと角度を変える。

ほんの一瞬の動作だった。
意識して見なければ気づかない程度のものだったかもしれない。

それでも不思議と目に残った。
なぜか頭から離れなかった。

ただの思い込みかもしれない。
仕事の連絡が増えただけかもしれない。

子どもが寝たあとにまとめて
返信しているだけかもしれない。

そう思おうとした。
そう思わなければいけないと自分に言い聞かせた。

疑う理由なんて、どこにもない。
これまで、信頼を裏切られるようなことは一度もなかった。

だから、深く考えるのはやめようとした。
それでも夜になると気になった。

子どもを寝かしつけている間、
静かな部屋の奥から聞こえてくるかすかな通知音。
短く、控えめな音なのに妙に耳に残った。

誰からなんだろう、と思ってしまう自分がいた。
そんなことを考える自分を情けないとも思った。

疑いたくない。
夫として信じるべきだと思っていた。
疑い始めたらきりがないことも分かっていた。

だから、何も聞かなかった。
「誰から?」とも、
「最近、仕事忙しい?」とも言わなかった。

聞けば、何かが変わってしまいそうだった。
聞いてしまえば、戻れなくなる気がした。

スマホを見つめる嫁の横顔。
画面の光に照らされた表情は、
俺の知らない場所に向いているように見えた。

その横顔を、
俺はただ、黙って見ているしかなかった。

気づいてしまった違和感を、
まだ「疑い」と呼ぶ勇気もないまま。

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この記事を書いた人

「理由は分からないけれど、何かがおかしい気がする」
そんな感覚を抱いたことのある方に、少しでも共感していただけたらと思い、このブログを続けています。日々の出来事や感じたことを、自分なりの言葉で淡々と綴っています。

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