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一度気づくと戻れなかった

一度気づいてしまうと
元の見方には戻れない。

そんなことが
本当にあるとは思っていなかった。

気づく前と後で
世界がはっきり分かれるような感覚。
ドラマや物語の中だけの話だと
どこかで思っていた。

でも、
実際はもっと静かで
もっと現実的だった。

以前なら、
何も考えずに受け流していた場面で
今は自然と立ち止まってしまう。

言葉を聞いた瞬間。
態度を目にした瞬間。
一瞬の間。

「今の言い方、前も似たことがあったな」

そう思った、その瞬間に、
頭の中で何かが切り替わる。

意識的に考えようとしているわけじゃない。
慎重になろうと決めたわけでもない。

反射に近い。

体が先に反応して、
思考があとから追いつく。

「あ、まただ」

そう感じてしまう。

そしてその瞬間
もう以前の感覚には戻れなくなる。

気づく前に戻りたい、
という気持ちは正直なところ、何度も浮かんだ。

でも、
戻りたいと思っても戻り方が分からない。

どうすれば、
気づく前の自分になれるのか。

何を忘れればいいのか。
何を見なかったことにすればいいのか。

分からない。

なぜなら、
気づいたこと自体を
なかったことにできないからだ。

一度理解してしまったこと。
一度引っかかってしまった感覚。

それは、
記憶として消せない。

意識の奥に静かに居座り続ける。
普段は表に出てこない。

でも、
ふとした拍子にすぐ顔を出す。

無理に追い出そうとしても
完全には消えない。

視界の中心からは外れても
必ず端のほうに残る。

見ないようにしても
見えてしまう。

気づかないふりをしても
分かってしまっている。

一度気づくと戻れない、
というのは
何かを「理解した」という感覚とは
少し違っていた。

知識が増えたとか
答えに近づいたとか
そういう前向きなものではない。

むしろ、
世界の見え方が変わってしまった
という感覚に近い。

同じ景色を見ているはずなのに
以前とは違う情報が目に入る。

同じ言葉を聞いているはずなのに
以前とは違う部分が引っかかる。

変わったのは相手なのか自分なのか。

それすらはっきりしない。

ただ一つ確かなのは
「以前のままではいられない」
ということだけだった。

無邪気に受け取ることが
できなくなっている。

深く考えずに流すことが
できなくなっている。

それが正しい変化なのか
間違った変化なのか。

今は判断できない。

でも、
戻れないという感覚だけは
はっきりしていた。

何か大きな出来事があったわけではない。
決定的な瞬間があったわけでもない。

それなのに、
静かに、確実に、
線を越えてしまった。

その線がどこにあったのか
今となっては分からない。

ただ、
気づいたときには
もう向こう側に立っていた。

そして、
振り返っても戻る道は見えなかった。

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この記事を書いた人

「理由は分からないけれど、何かがおかしい気がする」
そんな感覚を抱いたことのある方に、少しでも共感していただけたらと思い、このブログを続けています。日々の出来事や感じたことを、自分なりの言葉で淡々と綴っています。

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