これまでは、
できるだけ考えないようにしてきた。
分からないことに無理に意味を与えない。
答えを出さないまま時間が過ぎるのを待つ。
それが一番
波風を立てずに済む方法だと思っていた。
考えなければ傷つくこともない。
決めなければ失うものもない。
そうやって、
自分なりにバランスを取ってきた。
それでも、
あるところまで来ると
頭は勝手に動き始める。
止めようとしても、
考えないようにしようとしても、
ふとした瞬間に思考が先に進んでしまう。
これまで感じてきた違和感。
少しずつ重なってきた小さなズレ。
偶然という言葉では片づけにくくなってきた出来事。
それらが意識の中で
自然と並び始めていた。
整理しようとしたわけでもない。
結論を出そうとしたわけでもない。
ただ、
点と点が勝手につながろうとしている。
無意識のうちに
一つの形を作ろうとしている。
「もしかしたら」
その言葉が頭の中で何度も浮かぶ。
声に出すほどではない。
誰かに話すつもりもない。
ただ、
思考の奥で静かに繰り返される。
確信ではない。
事実でもない。
証拠があるわけでもない。
ただの仮説だ。
そう言い聞かせても
一度立ててしまった仮説は
簡単には消えてくれなかった。
否定しようとすればするほど
逆に意識してしまう。
だから、
別の可能性も考えてみる。
自分の思い込みかもしれない。
自分が敏感になりすぎているだけかもしれない。
タイミングの問題。
仕事や生活リズムの変化。
環境が少し変わっただけという可能性もある。
どれも、
もっともらしい。
どれも、
完全に否定できない。
むしろ、
そのどれかであってほしい
と思う自分もいる。
それでも同時に仮説を立ててしまった
自分の存在も否定できなかった。
考えないようにしていたはずなのに
考えてしまっている。
疑わないようにしていたはずなのに
疑うところまで来ている。
「考えてしまう段階に来ている」
その事実そのものが
これまでとは違っていた。
仮説は答えではない。
決めつけでもない。
結論でもない。
ただ、
考え始めてしまったという証拠だった。
もう、
何も考えずにいられる場所からは離れてしまった。
戻ろうと思えば
戻れるのかもしれない。
でも、
一度浮かんだ「もしかしたら」は
簡単には消えない。
そのことだけははっきりと感じていた。
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